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1960年から1964年にかけて、「壁」が基調として登場する暗い色調の作品が続きます。
《家》では、暗いモノクロームの色調で、目の前に立ち塞がるような廃屋が描かれました。《ゴミ箱》では、壁の手前にドラム缶や鉄屑が描かれ、やがてそれらは《人》や《一人》といった作品に展開していきます。
こうした表現は、帯広画壇の寺島春雄や、兄の神田一明ら、同時代の作品からの影響があったと考えられます。特に大きな影響を与えたのが曺良奎であり、その影響を窺わせる痕跡が、日勝のスクラップブックやデッサン帳に残っています。日勝はこれらの作品を描くことで、経済成長により物質的に豊かになっていく地方の農村社会と、その周縁に身を置く自分を見つめなおそうとしていたのかもしれません。