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神田日勝は小品で十勝の風景画を数多く描きました。そのほとんどは、販売や寄贈を目的とした平明で牧歌的な風景画です。《扇ヶ原展望》のように、注文を受けて描いた作品もあり、画家としての評価が高まっていたことがわかります。いくつかの作品では、特定の場所を描いたのではなく、ポプラ並木や積藁、サイロや馬の群れなど、特徴的なモチーフを組み合わせて、典型的な十勝の風景を作り出しているとも言われます。一方で、度重なる冷害と不作により、農民たちが土地を放棄して去った後の光景を描いた、《離農》のような作例も忘れてはならないでしょう。これらの風景画には、自然の厳しさと、そこで生きる人間の孤独感が根底に流れているのかもしれません。