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独立展や全道展で、若手画家として順調に足場を築き上げていた矢先、突然の病によって、日勝の生涯と画業に終止符が打たれます。1970年8月25日、享年32。15年にも満たない画歴でした。
亡くなった後のアトリエには、その突然すぎる死を物語るかのように、いくつかの作品が描きかけのままで遺されました。中でも最もよく知られているのが、「半身の馬」、「未完の馬」とも呼ばれる《馬(絶筆・未完)》です。農耕馬という画題や写実的な描写から、1965年頃の画風への「原点回帰」と語られてきましたが、じつは焦げ茶色の絵具の下層に、アンフォルメル時代に使用された赤、青、黄の原色の色彩が取り入れられており、その画業が最後まで試行錯誤の連続であったことを物語っています。
ひと筆ひと筆、大地を拓くように深く鋭く刻まれる筆触によって、画家は絵の馬に生命を吹き込みました。しかしその試みは未完に終わり、馬が半身のままの姿で遺されたことによって、本作は芸術に関わる様々なトピックやテーマを内包することとなったのです。すなわち、マチエールとイメージ、筆触、リアリズム、また、未完成、夭折の芸術家、芸術家と社会との関わり等について、観る者は絵の前で語り続けることでしょう。