音声解説

暗い色調と、ぽっかりと口をあけるマンホールが不気味な雰囲気を醸し出すこの作品の、無機質な鉄屑や硬くざらついた地面の描写は、日勝の《ゴミ箱》と相通じるものがあります。作者の曺良奎は日勝の初期の画風に最も大きな影響を与えた画家と言えるでしょう。曺良奎は1928年に当時日本の統治下にあった朝鮮に生まれました。1948年に当時の政権の弾圧を逃れて日本に密航し、倉庫やマンホールをモチーフに、資本主義社会の周縁に生きる者の過酷な現実と、その閉塞感や疎外感を強靭なマチエールで描いて高い評価を得ました。1960年に北朝鮮帰還事業で帰国、その後の消息はわかっていません。